どうも!受験数学のダイです。
今回は、確率分野において知っておくと便利なテクニックの1つ余事象を徹底解説します。
参考書や授業なんかでは、「とりあえず少なくともってキーワードが問題文にあったら余事象だよ」ってな感じでよく教わるんですが、結局のところ「余事象ってなんなの?」と質問されて、
すぐに「これだよ!」って説明できる人ってあんまりいないです。
しかも、「少なくとも」意外にも受験数学において絶対に見逃してはいけない余事象頻出パターンが他に2つありますが、みなさんは知っていますか?
今回の記事では、余事象の基本的な考え方、公式、そして受験数学における最頻出パターン3つを分かりやすく解説していきます!
目次
余事象ってなんぞや?
余事象=「ある事象の反対」実はそれだけ!
確率の用語って、同様に確からしいとか、根元事象とかやたらと難しい日本語使っててなかなか腹の底から理解するって難しいですよね。
でも、余事象って実はめちゃくちゃ単純明快なんです!
一言で言ってしまえば、「ある事象の反対」それだけなんです!
例えば、コインで考えてみよう。
コインを投げて「表」が出る。「表」の反対って…….. ?
そう!裏が出る。つまり、コインを投げて「表」が出るという事象の余事象は
「裏」が出るなんだ!だって、コインで裏と表しかないから、コインを投げて
「表」じゃなかったら「裏」しかないよね。

もう1つ分かりやすい例で言うと、サイコロを振って「偶数の目が出る」という事象。
余事象って偶数が出ない場合、その反対。「偶数」の反対は「奇数」だね。
つまり、「偶数の目が出る」という事象の余事象は「奇数の目が出る」なんです。
ある事象Aに対して、その事象Aが起こらない時、つまりその反対が余事象なんだ。
なるほど。サイコロって1〜6までの目しかなくて、偶数の2、4、6以外って言ったら、1、3、5の奇数グループしかないですね。
そうなんだ。これを数学的に表すとこんな感じ。

おお… 先生…. UとかAとかアルファベットがいっぱい…. 汗
大丈夫!意味はいたって単純だから!解説するね!
余事象関連キーワードと記号
事象A:ある実験やゲーム(試行)をしたときに起こりうる結果。この場合、サイコロを振って出た偶数の目(2、4、6)
事象$\bar{A}$ : ある事象Aに対して、事象A以外、反対のもの。今回は事象Aが「偶数の目が出る」なのでそのそれ以外の事象、反対の「奇数の目が出る」=(1、3、5)。読み方は、$\bar{A}$=エーバー。
全事象(U):ある実験やゲーム(試行)をしたときに起こりうる全ての結果。今回のサイコロの試行では、「偶数の目が出る」事象Aと「奇数の目が出る」事象$\bar{A}$を足した合計の事象。
今回の場合、サイコロを投げた時の全事象=6通り(1〜6のそれぞれの出目)
確率基本用語シリーズ〜知ってないと損する即効性のある受験頻出用語とは〜
余事象の記号は、バー(¯)といってこれを文字の上につけて、元の事象Aと区別するんだ。
余事象$\bar{A}$は、全事象Uから事象Aを引いた余った残り全部のこと。だから、余事象なんだ。
*教科書、多くの参考書では、余事象を$\bar{A}$のように表現しますが、Aの右上に小文字のc (complementary:補足)をつけて、$A^c$のように表すこともあります。意味は同じです。
全事象U (1, 2, 3, 4, 5, 6) ➖ 事象A (偶数:2, 4, 6) = 余事象$\bar{A}$ (1, 3, 5)
余事象には、このある事象Aというグループには入れないあまりものなんです!
だから、この漢字(余)の意味にも実は余事象の考え方が込められているんだよね。
余事象の公式と計算
余事象の計算では以下のような公式が成立します。
事象Aが起こる確率(P) =確率全体(1) – 「余事象$\bar{A}$: 事象Aが起こらない確率」
- (P)は、Probability (プロバビリティ)の略で英語で確率を意味します
余事象は、ある事象のあまりもの、そのグループに属さない反対のものってことは大丈夫だね!
ってことは、さっきの図を使ってもう一度解説すると、

事象Aの確率を求めるには、全事象Uから、事象Aの余事象$\bar{A}$を引けばいいんだ。
つまり、上の図でイメージすると
事象Aと余事象$\bar{A}$の入っている全事象から、
緑の部分(余事象$\bar{A}$)を切り抜くと、白い円で書いてある【事象A】の部分が残るよね。
全体から、余ったものを引くと、その残りが事象Aっていうイメージなんだ。
そして、確率では全事象、つまり確率全体を1として考えることが大前提なんだ。
なんで確率全体は1なの?
なんで確率全体って1になるんですか?確率って物事の出やすさ、出にくさを数字で表したものですよね?1っていうよりかは、10%とかの方がもっとしっくりきます。
そうなんだ。実は、この1っていうのが、100%を意味する百分率なんだ。
世界共通で使われている割合を表す単位で、0.01を1%としてパーセンテージを数字に変換したもの。例:0.05 = 5%, 0.1 = 10%, 0.75 = 75%, 1 = 100%
確率では、絶対に起こる事象の確率は1になるというのが基本的な考え方なんだ。で、これは百分率の100%が簡単に略された形です。
確率基礎:確率の基本的な考え方を30分でマスター!確率のおいしいとこだけ!
例えば、さっきのコイントスをするゲーム。
「表が出る」「裏が出る」それぞれの確率ってなんでしょう?
えっと… コイントスの場合、全事象が「表がでる」「裏がでる」の2通りしかないから.. $\frac{1}{2}$!!
そう、表が出る確率も裏が出る確率も$\frac{表 or 裏のどちらか一方}{全体(2通り)}$ = $\frac{1}{2}$だね!
では、今度はそれぞれの事象が起こる確率を足してみると…
$\frac{1}{2}$ (50%) + $\frac{1}{2}$ (50%) = 1 (100%)
やっぱり、1になる。つまり全体で100%になる!
逆に、絶対に起こり得ないありえない事象の確率は0(0%)になるんだ。
例えば、コイントスをして、表と裏の両方が一度に出る確率とか、サイコロを投げて10の目が出る確率、7.5の目が出る確率とか。完全にイカサマしたサイコロを作らない限りは、サイコロに10の目とか7.5なんて少数の目はないからね。
余事象のパターンはズバリ3つ!最強余事象キーワードを押さえよ
ここまで、余事象の基本的な考え方や公式を徹底的に紹介してきましたが、
次は試験問題ではどのように出題されて、どう攻略していくかです。
受験数学で、余事象の頻出パターンはズバリ!この3つです!
- 「少なくとも」
- 「〜でない」事象
- 倍数問題
この3つのパターンを押さえたら、受験数学で余事象なんて怖くないです!むしろ味方になってくれます!それぞれ詳しく解説していきます!
パターン1:「少なくとも」〜典型サイコロ問題で解説〜
2つのサイコロを同時に投げるゲームをします。この時、少なくとも1つのサイコロの出目が偶数の確率を求めよ。
確率問題で問題文に「少なくとも」ときたら、間違いなく余事象が使えます!
ステップ1:2つのサイコロを番号をつけて区別!
本問題では、サイコロを2つ投げるゲームです。そして、それぞれのサイコロは1〜6までのそれぞれ数字がついている一般的なサイコロです。


そして、これらのサイコロは同様に確からしいと言えます。
例えば、1の目が出る確率も5の目が出る確率も全体6通りある中の1通りなので
$\frac{1}{6}$とそれぞれの場合は等確率になっています。
確率【同様に確からしい】これだけ知っておけばいい2つのポイントとは?
これら2つのサイコロを別々なものと区別するために、
最初のサイコロに、サイコロ1。2つ目のサイコロに、サイコロ2と番号をつけます。
*サイコロA, Bなどアルファベットでも他の記号でも区別できればなんでもいいです。
ステップ2:余事象を考える
まずは、「少なくとも1つのサイコロの出目が偶数」の余事象を考えます。
さて、ここで余事象の意味を思い出してみましょう。余事象って…. ?
ある事象の反対、起こらない事象!
そう、コイントスだったら、「表が出る」の余事象は「裏が出る」だったね!
今回の場合、サイコロの偶数の目が出る事象(2、4、6)が出る事象をAとすると、
事象Aの反対、つまりサイコロを投げて偶数の目が出ない時って他になにが出るかな?
奇数の目です!
その通り!!サイコロは基本1〜6までのそれぞれの数字の出目しかないから、
2、4、6の偶数以外の目は、奇数の1、3、5の3つだね!
これをまとめると、
事象A 「偶数の目が出る」の余事象$\bar{A}$は、「奇数の目が出る」
奇数の目は、(1、3、5)の3通り。そして、今回は2つのサイコロを同時に投げるので、
積の法則により、

場合の数【積の法則】いつ掛け算でいつ足し算かあなたは知っていますか?
ステップ3:全事象の数を求める
先ほど、区別した2つのサイコロ、サイコロ1、サイコロ2について考えていきます!
それぞれのサイコロの出目は1〜6の6通り。
今回は、サイコロを2つ同時に投げるので試行なので、
サイコロ1の全体×サイコロ2の全体=全事象
6通り × 6通り = 36通り
2つのサイコロの場合、全部で36通りあるので、ある事象の確率を求めるときは
$\frac{X}{36}$のような考え方になります。
なので、余事象$\bar{A}$は、「奇数の目が出る」は、$\frac{9}{36}$
ステップ4:確率全体(1)から、余事象を引く
確率全体は1(100%)なので、
事象A 「偶数の目が出る」= 1 ー 余事象$\bar{A}$「奇数の目が出る」
= 1 ー $\frac{9}{36}$ = $\frac{27}{36}$ = $\frac{3}{4}$
よって、「偶数の目が出る」が出る確率は、$\frac{3}{4}$でこれが答えです!
実は今回の問題は余事象を使わずとも解けたります。
しかし、今回のように2個のサイコロを使う試行では、いくつかの場合分けがおこり、余事象を使わなければ計算の量が増えてしまいます。
例えば、2個のサイコロを投げるゲームでは以下のような3パターンがありました。
(偶数、奇数)、(偶数、偶数)、(奇数、奇数)
「少なくとも1回は偶数の目」なので、確率計算しないといけないのは
(偶数、奇数)、(偶数、偶数)の2つです。
しかし、余事象を使うと、(奇数、奇数)の1パターンだけを計算して、あとは確率全体(1)から引くだけで、「少なくとも1回は偶数の目」の確率ができるのです!
パターン2:「〜でない」をみたら余事象を疑え!
袋に赤玉3個、青玉4個、白玉5個入っている。この袋から、無作為に玉を1つ取り出すとき取り出した玉が青玉でない確率を求めよ。

問題文に「〜でない」がある場合も、場合分けが複数あるので余事象が有効です。
袋の中から玉を1つ取り出す試行なので、取り出した玉のパターンは以下の3つです。
- 赤玉
- 白玉
- 青玉
取り出した玉が、青玉でない確率なので、
- 赤玉
- 白玉
これら2種類の玉が出る確率をそれぞれ別で計算すれば、青玉が出ない場合の確率は求められますが、場合分けの計算はかなりめんどーなので、ここでも余事象の登場です!
「青玉がでない」の余事象を考えていきましょう。
「青玉がでない」の反対は……
青玉が出る!
そうなんです!つまり、今回の場合は、
確率全体(1)ー 青玉が出る確率 = 青玉がでない確率
まず全体の確率は、赤玉3個、青玉4個、白玉5個の合計12個の玉から1個の玉を取る試行
なので、12C1 = 12通りです。
そして、余事象の「青玉が出る」確率を求めます。青玉4個から1個を取るので、
4C1 = 4通りです。
そして、余事象の確率は、$\frac{青玉が出る数}{全体}$=$\frac{4}{12}$
あとは、全体確率1から余事象の確率を引くだけなので、
青玉がでない確率 = 1 ー $\frac{4}{12}$ = $\frac{2}{3}$
取り出した玉が、青玉でない確率なので、
- 赤玉
- 白玉
これら2種類の玉が出る確率をそれぞれ別で場合分けして計算。
1)場合1:取り出し玉が赤玉の確率
赤玉3個から1個を取り出す試行なので、3C1 = 3通り
確率は、$\frac{赤玉}{全体}$=$\frac{3}{12}$
2)場合2:取り出し玉が白玉の確率
白玉5個から1個を取り出す試行なので、5C1 = 5通り
確率は、$\frac{白玉}{全体}$=$\frac{5}{12}$
場合1(赤玉)と場合2(白玉)は同時に起こらない試行なので、
和事象により、
$\frac{3}{12}$ ➕ $\frac{5}{12}$ = $\frac{8}{12}$ = $\frac{2}{3}$
余事象を使わなくても、同じ結果が出ますが、2つの場合分けを挟んでいるので計算の量が多くなっているのが分かると思います。今回の場合は、場合分けは2つですが、問題によっては場合分けが3〜5つの場合もあります。その1つの計算過程でミスをしたり、計算の組み立て方を間違えてしまえば、絶対に答えには辿り着けません。受験数学では、いかにめんどーな計算を避けて、近道をするかが大事です。ぜひ、この問題を通して余事象をマスターしてみてくださいね!
和事象〜
パターン3:倍数の問題は余事象の出番!
1から6までの数字がそれぞれ書かれたカードが6枚あります。そのカードの中から2枚を同時に取り出すとき、2枚のカードの積が偶数の確率を求めよ。
2枚のカードの積が偶数
実は今回のような倍数問題でも、余事象はとてつもない力を発揮します。
まず、「2枚のカードの積が偶数」の条件を考えていきましょう。
そもそも2個の数字をかけ算したときに偶数になる時ってどんな時でしょう。
ううん…. 2をかけた時?よく分かりません。笑
いや、たかし君!すごくいいポイントだよ!0以外の何かに2をかけた時!もっと言うならば、2のような偶数×0以外の数字=偶数になるんだ!
今回の1〜6までのカードの中に偶数のカードは2、4、6の3枚!
そこから2枚取るとき、その中の少なくとも1枚が偶数であれば積が偶数になります。
パターンとしては、
- 1枚目:偶数 × 2枚目:奇数
- 1枚目:偶数 × 2枚目:偶数
あっ!「少なくとも」が出てきた!!余事象の臭いがぷんぷんしますね!
次に、「少なくとも1枚は偶数カード」の余事象を考えます。ここで余事象の最強公式を使うと簡単に事象の余事象がわかるよ!
「少なくともn(個数)」の余事象は「n−1以下」
今回の場合、偶数カードが少なくとも1枚なので、余事象最強公式を使うと
余事象 = 偶数カードが0枚以下
つまり、1〜6までのカードの中で偶数が0枚以下、偶数カードがいっさい使えないとなると
残りは奇数カードを引くしかないよね。
「少なくとも1枚は偶数」の余事象は、「引く2枚とも全て奇数カード」になるんだ!
余事象を使うので、さっきみたいに
- 1枚目:偶数 × 2枚目:奇数
- 1枚目:偶数 × 2枚目:偶数
上の2パターンの場合分け計算みたいなめんどくさいことはしないで、代わりに
全体確率1 ー 余事象「全て奇数カード」 = 2枚のカードの積が偶数
の作戦でいけるよ!計算の手間がかなり省けるよ!
全体の通りは、6枚のカードから2枚を取り出す試行だから、6C2 = 15通り
そして、「引く2枚とも全て奇数」の場合の数は、
奇数カード1、3、5の3枚の中から、2枚を取ればいいから、3C2 = 3通り
だから、確率は、$\frac{2枚とも奇数}{全体の数}$ = $\frac{3}{15}$
あとは、これを全体確率から引くだけでいいから
1 ー $\frac{3}{15}$ = $\frac{12}{15}$ = $\frac{4}{5}$
受験数学定番の倍数問題ではよく倍数の条件を考える上で、「少なくとも」が使われることが多く確率を求める際には、余事象での攻略が大変有効です。
倍数の条件を考える=>「少なくとも〜」=>余事象最強公式(n-1)で余事象を求めて計算
この流れが鉄則です。ぜひ押さえておきましょう!
余事象って本当に学ぶべきもの?
ここまで余事象を使って問題を解いてきましたが、
「なんで余事象を学ぶの?」
と思った読者の方もまだいると思います。
「別に正面突破で地味に図とか書いて計算しればいいじゃん?」
「別に場合分けすればいいだけの話じゃね?」
確かに、本記事でも解説したように、余事象を使わなくても問題は実際解けます。
しかし、はっきり言います。
受験数学において、いつでも正面突破するのは自殺行為です。
試験には時間制限があります。どんな難問も解けると自負しても、試験時間内に全てを解き終わることができなければ点数は取れません。
確率には、場合分けをするという独特な考え方があります。先ほどやった倍数問題でも、いくつかに場合わけをして、最後に合算して確率を求めました。問題が難しくなればなるほど、場合分けも数が増えて、計算量も計算する値も大きくなります。
途中で1つでもミスをしてしまうと、その問題が絶対に正解することができません。
確率で失敗する人のパターン〜確率特有の難しさとは?〜
そして、多くの確率を苦手としている人はそれを理解せずに、いつも正面突破で何も考えずに難しい計算をして、ミスをするのです。
問題よって解き方やアプローチ方法を自分なりに作っていく。そして、その過程でやたらと場合分けが多くて計算がめんどーと思ったら今日学んだ余事象を使ってみてください。
受験数学においては、いかに解答への近道を見つけるが大切です。少なくとも受験数学においては、難しい計算ができたからってかっこよくもなんともないです。思考停止になって、常に正面突破をするのではなく、いかに簡単に問題を解ける考えてアプローチを変えてみることが大切です。
今日紹介した余事象はその1つのテクニックです。
野球のピッチャーでもバッターになにも考えずにストレートばかり投げても打ち取れません。
相手バッターによって、投げる球種を変えたり、工夫することで初めて押さえることができます。
ぜひこの記事を読んだあなたはもう一度本記事で扱った問題をもう一度自分で解けるまで確認してみてください。
最後に:余事象のまとめ
いかがだったでしょうか?
今回はとてもボリュームが多くなってしまいましたが、受験数学のテクニックの1つ余事象を徹底的に解説しました。まとめとしては、
- 余事象とは、ある事象の反対もしくはある事象が起こらない場合のこと
- 余事象計算は、全体確率1から余事象を引くだけ
- 余事象のパターンが、「少なくとも」「〜でない」「倍数問題」の3つ
- 余事象最強公式は、「少なくともn」= 「n-1以下~」
余事象のサインが出たら、とにかく計算を簡単にする方法を探して、計算の近道を見つけて確率問題を攻略しましょう!
「裏」だ!